先日、飲み会をした。
同席したのは、私が学校を卒業してすぐに就職した「神奈川ニュース映画協会」という映像制作会社の、大先輩の方たち。
60~70代が大半だったが、みんなかつては演出家として、キャメラマン(カメラマンではないそうだ)として、映画づくりに励み、現在もあっちこっちでご活躍中なので、ひじょうに元気で、飲む、飲む。私は、彼ら諸先輩方に毎晩、毎晩、飲みに連れていかれて、酒の飲み方を教わったのだ。
じつは昨年7月にも同じ飲み会があり、半年ぶりの再会だったのだが、前回出席せず、10数年ぶりに再会した方もいた。その一人がスズキさんだ。
スズキさんは最初、私が誰だかわからなかったのだが、「松本ですよ!」というと、いきなり顔を上気させて叫んだ。
「まっちゃんかよ! 俺はこの女にさんざんいじめられたんだ!!」
映像の知識なんてまるでないまま、入社してすぐに演出家をやらされた私が、最初に組んだキャメラマンがスズキさんだった。
当時のスズキさんは60歳近くだったのだが、大病をした後だったそうで80歳ぐらいに見えた。入りたての私は大病したことなんて知らないから、「このおじいさんは大丈夫なんだろうか」と、心配しながらロケ現場に行っていた。
後で聞いたら、大丈夫も何も、スズキさんは前衛的な作品を数々手がけた名キャメラマンだったのだが、それを知らず、厚顔無恥全開で、私はスズキさんに「ああ撮れ、こう撮れ」と指図をしていたのだった。あの時、スズキさんは黙っていたけれど、きっとプライドを傷つけられたんだろう。だから、懐かしい再会もそこそこに「いじめられた!」と叫んだんだろう。
スズキさん、ごめん、ごめん。
大先輩に失礼な謝り方かもしれないが、撮影でタッグを組んでいる時は、上も下もなく真剣勝負だから、先輩というよりは同志とかライバルとか、そんな感覚なのだ。だから、30歳も歳が離れていても、「ごめん、ごめん!」のほうが、私にはしっくりくる。
スズキさんと組んだ作品はだいたい覚えているし、ロケ現場のこともありありと浮かんでくるのだが、酒が進む中、スズキさんは私がまるで覚えていないエピソードを披露してくれた。
「ちょうど今ぐらいの時期にな。まっちゃんと俺で春の風景を撮りに行ったんだよ。その時も、この女は“ちゃんと撮れてるんですか”なんて聞くんだよ。まったく生意気なヤツだよ。だから俺は、キャメラをポンポン叩きながら言ってやったんだ。“まっちゃん、大丈夫だよ。この中には春がいーっぱいつまってるから”ってな。それでもこいつは“ホントですかあ?”って疑ぐりやがる。まったく生意気なヤツだったよなあ」
キャメラの中に、春をいーっぱい詰め込んでくれていたのか。覚えてないけど、スズキさんありがとう。でも、そんなに生意気、生意気言うなって。私も若かったんだから。スズキさん、ごめん、ごめん。また飲もう!